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ザッツ・エンタテインメント

カテゴリ: おすすめレビュー(映画など) 地域: どこか
(登録日: 2006/09/20 更新日: 2024/04/02)


2006
ジャック・ヘイリー・Jr.
フレッド・アステア, フレッド・アステア, ビング・クロスビー, ジーン・ケリー, デビー・レイノルズ, ミッキー・ルーニー, ジェームズ・スチュワート

この「おすすめレビュー」は、mixiの「おすすめレビュー」(DVD)に投稿したものです。
 

おすすめレビュー


多感な高校生の時に観た体験が、この映画をとりわけ思い出深くした要因です。1970年代の後半、新宿ミラノ名画座というところで観ました。そういう鑑賞体験を思い出すこと自体が既にノスタルジアです。

いやあ、凄い凄い。こんなにシネマ(制度としての映画)を露出させたフィルム(映画作品)も珍しい。メタ映画という点では『雨に唄えば』よりも格上。何しろメタ映画の『雨に唄えば』まで包摂したスーパーメタ映画です。

この映画の何が面白かったかというといくつも理由があります。その一つは、シネマ装置の露出性。スタンダード画面がある時にはシネスコの横長画面に換わり、スクリーンの両側の黒幕が開いたり閉じたりする。もちろん白黒もあればカラーも。さらにはトーキーもサイレントも。こんなに銀幕という装置を意識させる映画はありません。黒幕の開閉が一つのイベントとなり、わくわくさせる感興を生み出してくれます。ああ、これが映画なんだと身体的に感じ取ることができました。こんな装置的な映画、かつてなかったですよ。

第二の理由もやはりスーパーメタ映画の側面。ミュージカル映画こそがトーキー文化の真髄であり、その歴史であるというこの圧倒的な醍醐味。語り部が次々と現れてはバトンタッチしていくのも楽しく、華やかなりし頃のMGMの記録映像が挿入されると、それだけでも興味津々です。

この映画がきっかけでどれほどMGMミュージカル本編を見ることを促されたことか計り知れません。『巨星ジーグフェルド』を高校生の時にフィルム・センターで観たのは、これ観て何としても観たいと思ったから。『ブロードウェイのバークレー夫妻』もついに貸しビデオ店でみつけて観ました。

どのような文明にも栄枯盛衰はあるわけですが、よくMGMミュージカルが30年もの繁栄を謳歌したものだと思います。映画文明の奇跡の一つです。いろいろ観たミュージカル映画本編の中で唯一退屈して最後まで観れなかったのが『恋の手ほどき』。やはり映画がこの質になったら、そこで終止符を打つしかなくなったというのもよくわかる…。

今日的には、『ザッツ・エンタテインメント』ほど、DVDに適した映画はないと言っても過言ではありません。映画全体が「さわり」集なわけですから、見たい場面だけを見ることができます。これがストーリーを追うシーケンシャルな構造の映画と根本的に違う点。スーパーメタ映画であることに加え、現代にも対応するモジュール化された(=非シーケンシャルな)構造のコンテンツと言えます。
 
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