自然への感謝の心「草木塔」 〜やまがた読本より引用〜

草木塔とは伐採した樹木を供養する塔で、自然石や加工石材に「草木塔」「草木供養塔」と刻まれている石造物を総称したものです。船橋順一氏の調査によれば、全国で93基確認されていますが、うち本県内に86基、特に置賜地域に65基が建立されており、全国的にも珍しい塔です。建立の年代はできませんが、はっきりと読み取れる最古のものでは、米沢市入田沢塩地平の草木供養塔の安永9年(1780)のものです。年代別に区分してみると、江戸時代が35基、明治時代が15基、大正時代が4基、昭和期が17基、平成になって20基と継続的にその数も増加しています。
 草木塔が建立された理由に諸説がありますが、上杉鷹山の治世の代に始まっていることから鷹山公の遺徳を偲ぶものとするものや、湯殿山信仰に由来するもの、仏教の経典にある「草木国土悉皆成仏」に由来するもの等があります。草木塔に刻まれた事項からみれば、草や木の霊に対する鎮魂、植樹や緑化に尽力した事柄への顕彰、自然の恵みに対する畏敬や感謝、庶民の素朴な願いを念じたもの等に分けられます。
 古くは路傍や休場、境内地などに建てられ、日常生活の中で自然への信仰の対象となっていたものと考えられます。国際日本文化研究センター所長の梅原猛氏によれば、「山形にこのような草木塔が多いのは、そこには一木一草の中に神性を見る土着の思想が強く残っていたからであろう。」と言っています。草木塔は本県に残された庶民信仰の対象として伝えられた数少ない文化遺産として、全国的にも誇る価値のあるものと評価されています。
 本県に残る草木塔は、木や山の恵みを感謝しながら生きる心根をあらわすものであり、環境問題が重要になってきている今日、自分たちの生活を再確認する良き教材となっています。