山梨県笛吹川の水防工法 聖牛
[ 笛吹市(笛吹市)へ戻る ] [ 聖牛(聖牛) | 笛吹市(笛吹市) | 記録日(2007/10) | 登録日(2006/04) ]
山梨県笛吹川の聖牛

武田信玄が創案したと言われる伝統的水防工法

聖牛: 笛吹川の聖牛 笛吹市: 山梨県笛吹市
(登録日: 2006/04/20 更新日: 2008/01/03)


 日本3大急流の一つである山梨県の富士川水系では、「聖牛」と呼ばれる伝統的水防工法が継承され、現在も活用されている。(三大急流:静岡・山梨県富士川、山形県最上川、熊本県球磨川)
 聖牛については、江戸時代に書かれた「地方凡例録(ぢかたはんれいろく)」という書に、武田信玄の創案になるものとされ、山梨県の急流である釜無川、笛吹川に施工された。その後、武田信玄の勢力圏拡大に伴って天竜川、大井川、安倍川、富士川に伝わり、享保年間以後は各地に流布するに至ったという。
 また、国土交通省の「技術と人を結ぶ交流誌・繋(つなぐ)」平成16年度Vol9 によると、聖牛は牛類の一種で、主に急流河川における水衝部に複数個配置され、減勢効果、導流効果が期待される透過性の水制。三角錐に木を組み合わせた形状で、その形が牛の角に似ていることから名付けられたと言われるという。
 聖牛は、その大きさにより、大聖牛、中聖牛などがある。地域によっては、聖牛を「川倉」と呼ぶところもある。また、材木を四角錐に組んだものは「菱牛」と呼ばれるなど多くの種類がある。
 山梨市では、以前は聖牛というより、「川倉」の名称で親しまれてきた。

=========
 明治初期の土木工法を記した「土木工要録」によると、河川の水防工法には、3種類あるとされている。

1.大聖牛(だいせいぎゅう)  川の流れを変えるために用いられる工法。特に、河川の上流部から中流部の瀬替え、取水堰周辺、河岸部の保護に利用した。
2.川倉(かわくら)  大聖牛よりも小ぶりなもの。
 利用は大聖牛と同じ。

3.菱牛(ひしうし)  大聖牛や川倉と同様で、特に小河川での流れを変える時に用いられる。

=========
 国土交通省の公開情報によると山梨県内での聖牛による河川整備事例は、以下の通り。

1.富士川水系富士川
 設備名称:聖牛
 場所:市川三郷町
 目的と概要:河岸保護および河川伝統技術の継承を目的とした水制。
2.富士川水系釜無川
 設備名称:聖牛
 場所:鰍沢町
 目的と概要:河岸保護および河川伝統技術の継承を目的とした水制。
3.富士川水系笛吹川
 設備名称:川中島水制(聖牛)
 場所:笛吹市
 目的と概要:河岸保護および河川伝統技術の継承を目的とした水制。
================
●さらに詳しい情報は、
国土交通省甲府河川国道事務所の「伝統的治水施設の保全と整備」ページにあります。
 このページには次のように説明されています。

「聖牛」
 富士川流域に残されている甲州流河除法といわれる伝統治水工法のひとつである「聖牛」。富士川で発祥し、その効果が顕著であるため全国の主な急流河川で古くから採用されてきました。三角錐というシンプルで安定性のある構造であるため、堤防を守る「水制工」として施工すると『堤防の根元には土砂を堆積』させて補強し、『川の流れる側の砂は下流へ』流し河積を確保するものです。
http://www.ktr.mlit.go.jp/koufu/torikumi/kawa/10.htm
 (※デジ研注)聖牛を堤防のそばに置くと、洪水のときには、堤防の根本に土砂が堆積し、荒れ狂う水流の勢いが直接堤防にぶつからない。こうして聖牛は堤防が決壊しないよう守ってくれる。
 

笛吹川で施工された聖牛の写真レポートについて

 国土交通省甲府河川国道事務所は、平成18年4月笛吹市石和町川中島地内、笛吹川の笛吹橋近くで、聖牛を新規に工事し、完成させた。古くから設置されている聖牛が護岸の役目を終え、痛みが激しいことから、更新したものである。
 この「笛吹川聖牛」によりの伝統工法の構造がよくわかるので、NPO地域資料デジタル化研究会では、デジタルアーカイブとして記録した。
 
(15件)
01 笛吹川の聖牛 02 笛吹川の聖牛 03 笛吹川の聖牛 04 笛吹川の聖牛
05 笛吹川の聖牛 06 笛吹川の聖牛 07 笛吹川の聖牛 08 笛吹川の聖牛
09 笛吹川の聖牛 10 笛吹川の聖牛 11 笛吹川の聖牛 12 笛吹川の聖牛(コンクリート柱による)
13 笛吹川の聖牛 14 笛吹川の聖牛 15 笛吹川の聖牛



2007風林火山博で展示された聖牛解説(武田信玄の治水から)


→画像表示 [ Lサイズ ] [ オリジナル ]
記録日: 2007/10/20 甲府・県民情報プラザ「風林火山博」会場

平成19年のNHK大河ドラマ「風林火山」と並行して開催された「風林火山博」会場(甲府市丸の内1丁目、県民情報プラザ)では、武田信玄公の治水に関する業績が紹介され、その実例として伝統技法による「聖牛」が会場に展示された。これは市川三郷町の村上国昭さんが制作した。前立て、合掌木、棟、梁、重し蛇篭などの構造と名称がよくわかるので、主催者のご理解により郷土学習教材として掲載させていただいた。
 
(1件)
01 風林火山博に展示された聖牛



笛吹川の菱牛(ひしうし)
(2件)
01 菱牛 02 菱牛

聖牛の建設現場アクセスマップ情報
(1件)
01 山梨県笛吹市石和町川中島

NPO 法人地域資料デジタル化研究会デジタルアーカイブへ戻る
[ 笛吹市(笛吹市)へ戻る ] [ 聖牛(聖牛) | 笛吹市(笛吹市) | 記録日(2007/10) | 登録日(2006/04) ]
[ ホーム| ]