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信州風穴アーカイブ

全国・信州風穴アーカイブ(オープンデータ)サイト公開計画

カテゴリ: 風穴を知る 地域: 長野県
(登録日: 2016/07/12 更新日: 2017/08/05)

長野大学 前川道博

1.趣旨


 全国に数多く遍在する風穴は信州(長野県)にその半数近くが集積しています。山岳に恵まれ、蚕糸王国信州とも呼ばれた蚕糸業の中心地・信州は、風穴を用いた蚕糸業(蚕種冷蔵)の最も盛んな地域でした。蚕糸業の産業遺産でもある風穴は、現代においては農産物等の冷蔵などにも使われ、新たな地場産業の創出に向けた地域資源としての可能性にも関心が寄せられています。

 長野大学とシルクロード長野ネットワークでは、21世紀の知の集積・活用の情報拠点となる「地域知識基盤プラットフォーム」の構築を目指し、各地域の自治体・団体・市民等が参加して地元の地域知識資源を蓄積・活用する分散型オープンデータサイト「信州蚕糸業オープンデータサイト」(仮称)の構築を試行的・実践的に始めます。

 当該サイトの構築は、地域資源を活用した産業・観光の振興、小中学校・高校・大学・社会教育(生涯学習)など幅広く地域学習の支援に、また地域学習の成果物としてのサイト構築に開かれ連動していくものです。

 その分散型サイトの一つとして「全国/信州風穴アーカイブ(オープンデータ)サイト」の構築を試みていきます。
 

2.風穴をめぐる課題


 風穴研究家、清水長正氏による全国風穴の調査研究が礎となり、NPO地域づくり工房(代表:傘木宏夫氏)が中核となって2014年に「全国風穴小屋サミット」(第1回全国風穴サミット)が開催された。併せて「全国風穴小屋マップ」が作成された。2015年には風穴研究の集成となる『日本の風穴』(清水長正・澤田結基編)が出版された。全国風穴サミットは2015年出雲で開催され、今年2016年、信州上田で開催される。全国風穴サミットは会を重ねるごとに参加者数が増加し、2016年は200名を超すことが確実な勢いである。

 風穴研究は、全国各地域に遍在する研究者によって積み上げられ、既に一つの研究者ネットワークを形成している。これに風穴を愛好・研究する市民の活動などが交わってさらに大きなネットワークを形成している。

 惜しむらくは、現在、広がりつつある風穴研究を共有し発展させる方策が十分に講じられていないことである。

 風穴研究は風穴に興味を持つ誰もがそれぞれの視点・興味から始めることができる敷居の低さに面白さがある。各地域の個々の風穴に対する研究は少なく、地元の風穴の調査を進め、成果を発表する機会を作れることはこの上ない可能性を開くことにつながる。児童生徒に対しては自然観察の体験学習となり、蚕種冷蔵に使われた産業遺産としての歴史からも地域学習ができる。さらには産業遺産を活かした地域づくり、産業の創出、観光の振興といった地域活性化の活動に道を拓くことになる。

 研究成果を共有し発展させていくためには、基礎となるデータの絶えざる更新が欠かせない。これを行うためには既に整備された基礎データを更新することに加え、全国に遍在する個々の風穴のデータ、調査を何らかの形で集約・更新する分散的な共有の仕掛けが不可欠である。
 

3.風穴の研究発展に求めたい対策


(1)全国風穴データのオープンデータ化によるデータの利用促進
 全国から渉猟された風穴小屋の詳細データとA1サイズの大きなマップのボリューム感は素晴らしく、これを手にした誰もが感嘆の声をあげるほどにインパクトが大きい。課題は紙媒体である限り、データの更新はなく、その配付効果も有限であることである。

 これだけの網羅性のあるデータは極力オープンデータ化されて、誰にでも分け隔てなく利用が促進される対策を講じ、風穴研究・学習の裾野を広げることにつなげていくことが望ましい。

(2)全国各地の風穴データを集積させる仕掛けづくり
 全国の風穴データを集積するには、各地域の研究者や市民などが自律分散的に風穴を調査しデータを作成・発信することが不可欠である。とりわけネット社会においては、それぞれの地域の人々がデータをネットに公開し提供しあう仕掛けを作ることにより解決する策が有効である。

(3)全国風穴サミットのような活動の拠り所となる緩やかなネットワーク
 全国風穴サミットは全国の風穴研究者・風穴愛好者のネットワークを広げることに大きく貢献している。ただし、年1回の開催周期であること、開催地の地元メンバーがその都度実行委員会を組織し実行する方式のため、持続的な発展の拠り所が形成されにくい課題がある。この点では、全国風穴サミットに大きく貢献されてきたNPO地域づくり工房にその中核的な役割を緩く担っていただくことが最も現実的で、それを第一に期待したい。
 

4.具体的対応策とその目的


(1)目的
 第3回風穴サミット信州上田実行委員会では、サミット開催の目的として次の4項目を挙げている。

@風穴をめぐる各地の実践を交流し、利用ノウハウの知見を高める。
A風穴跡の存在を発信し、各地での掘り起こしを促す。
B風穴の復元・活用を進める仲間のネットワークを構築する。
C観光交流を促進する。

 これらの目的は本来的に個々のサミットで実現できるものではなく、持続的な活動の積み上げの中に達成されていくものである。

(2)第3回全国風穴サミットの実施に対する全国・全県向け広報策
 第3回全国風穴サミットは既にその実施計画を実行しており、現時点(7月10日)では約一ヶ月半後にサミットが実施される段階に至っている。実行委員会が地元上田の市民を中心に構成されており、地元住民、風穴サミットのリピーターの2層を対象に広報された経緯がある。そのため、全国向け広報に相応しい後援名義を追加し、全国・全県に向けた広報対策を講じた。

 風穴の約半数が集中する信州が風穴の宝庫であること、それらが産業遺産(蚕種冷蔵施設)であり、「全国風穴サミット」のPRを通じて観光・産業の振興、自然・歴史の学習に供するものであることを全国にPRする。チラシは7月下旬、全国・県内の各所に2万部配付予定。

(3)全国/信州風穴アーカイブ(オープンデータ)サイトの構築
 「全国風穴小屋マップ」をベースとする全国風穴リスト(マスタデータ)を作成し、これと関連する各地のデータは、全て自律分散型のサイトの参加・運営により補完させる。

 風穴に関わる活動主体は学校、地域の生涯学習グループなど多様なケースが想定できる。これらの自律的分散的サイト構築が促進されるよう「市民参加型ネット」(mmdb.net)の利用を希望個人・団体に開放する形で支援する。

(4)分散サイト構成
●信州蚕糸業アーカイブ(一部オープンデータ)サイト(仮称)共通資料/基礎資料
 『信濃蚕糸業史』(1937年、全3巻、大日本蚕糸会編)など、公開可能で、かつオープンデータ化が可能な資料(史料)の一部公開を進める。長野大学プロジェクトチーム+シルクロード長野ネットワークによる運営を行う。

●全国風穴アーカイブ(一部オープンデータ)
全国風穴サミット開催を契機に作成された「全国風穴小屋マップ」を継続的に更新可能な全国風穴リストをオープンデータのマスタデータとして公開する。管理の負担を減らし、持続的な更新を行うため、「全国風穴リスト」のみとする。付随する情報は一切付けない。
〔提案〕清水長正氏の監修によりNPO地域づくり工房が管理更新する。

●信州風穴アーカイブ(一部オープンデータ)
 し、これと並行して信州風穴(上田周辺の風穴)の提供可能な個別の風穴データ(名称・位置情報等の基礎データ、画像、動画、温度等の観測データ、関係資料等)の公開を進める。
〔サイト公開〕http://www.mmdb.net/usr/oraho16/fuu/
 〔提案〕信州上田風穴の会が地域活動としての風穴調査データを随時任意に公開する。

●全国・信州各地の風穴のオープンデータ
風穴アーカイブ(可能な限りオープンデータ)を各地の有志(個人や団体)が主体的、持続的に発信できるよう、長野大学が「市民参加型ネット」を利用した支援を行う。

◎アーカイブ(オープンデータ)サイト構築運用/オープンデータ活用アプリ提供
 各分野・各地域のデータを常時参照し、検索・閲覧・追加更新が可能なアプリを提供して、その活用を支援する。長野大学のプロジェクトチームで支援する。

★全国風穴/信州風穴オープンデータ
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★信州風穴アーカイブ
 カテゴリ
信州の風穴
第3回全国風穴サミットの記録
  倉澤運平と別所温泉
  独鈷山風穴(長野県上田市)
  氷平風穴(長野県上田市)

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