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OMF2015/ベアトリスとベネディクト 2015/08/24

カテゴリ: サイトウ・キネン・フェスティバル松本 地域: 長野県
(登録日: 2015/08/26 更新日: 2024/04/02)


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記録日: 2015/08/24

オペラ「ベアトリスとベネディクト」
2015年8月24日(月) 開演19:00
会場:まつもと市民芸術館

<プログラム>
ベルリオーズ/オペラ「ベアトリスとベネディクト」

サイトウ・キネン・オーケストラ
指揮:ギル・ローズ(小澤征爾氏代役)
演出:コム・ドゥ・ベルシーズ
ベアトリス:ヴィルジニー・ヴェレーズ
ベネディクト:ジャン=フランソワ・ボラス
エロー:リディア・トイシャー
合唱:OMF合唱団
 

雑記帳


今年2015年から「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」(SKF松本)が「セイジ・オザワ 松本フェスティバル」(OMF)に名称変更となりました。そのメインプログラムとなるオペラ公演の初日を観に行ってきました。

OMF2015のパンフレットに過去のSKFで上演されたオペラ系演目のリストが載っています。1999年の演目『ファウストの劫罰』以来、私はSKFに魅せられ、毎年欠かすことなくオペラ系演目を観ています。今回の演目『ベアトリスとベネディクト』が17回目になります。毎回、期待に違うことがなく、上演の品質が保証されていることも毎年来たいと思わせる誘因です。2004年公演からは、オペラ系会場が松本文化会館(キッセイ文化ホール)からまつもと市民・芸術館に替わり、会場がより一層、祝祭的な雰囲気に変わりました。松本ぐらいの20万人程度の規模の地方都市で、これだけの華やかな文化ホールの環境が備わって、来訪者をハレの雰囲気に誘ってくれる都市はありません。SKF(OMF)のこの上ない魅力ポイントの一つです。

当初、『ベアトリス』は小澤征爾さんが指揮する予定でしたが、小澤さんが腰を骨折され、オペラ・ボストンのギル・ローズさんが急遽、指揮することとなりました。

小澤さんはベルリオーズが好みで、かつ得意なようです。生まれて初めて聴いたSKFが『ファウストの劫罰』でした。劇的交響曲で、通常はコンサート形式で上演されます。その時はオペラさながらに舞台で演じられ、その舞台の素晴らしさに圧倒されました。16年も前のことながら、つい先日のことのごとくに脳裏に刻まれています。2007年は『幻想交響曲』をSKFで聴きました。乗りに乗った指揮ぶり。熱演、名演でした。

そして今回もベルリオーズ(1803〜1869)。しかも『ベアトリス』は上演自体が非常にめずらしい演目です。日本では過去には1995年に一度上演されて以来2回目らしい。私もかつて聴いたことがなく、今回の上演で初めて知りました。1862年の作品。『幻想交響曲』が1830年の作品ですから、それから32年も経過しています。若い才能が横溢した『幻想』に比べると、『ベアトリス』は極めて品性がよく、ある意味、物足りない。1862年と言えば、ワーグナーがあの歴史的なオペラ『トリスタンとイゾルデ』を作曲した1859年以後となります。つまりポスト『トリスタン』。『トリスタン』と比べたら『ベアトリス』は何か100年遡った時代の作品であるかのような、旧式さの印象が強い作品でした。モーツァルトのように音楽がドラマと共に展開してはいかず、台詞を語っては歌が入って心情を吐露し、という繰り返しのオペラです。コメディ風ながら、どうも台本が単調過ぎるのが気になる作品。餅屋は餅屋と言いますが、作曲家は台本づくりでは一歩及ばずという印象はぬぐえません。

ところで、今回は2階正面中央部の最後尾に席を取りました。席のすぐ背後にステージに向かって指揮者の大型モニタ画面が白黒で演奏中もずっと点けられていました。こういう仕掛けがあるとは知りませんでした。おそらく、公演中の暗闇の中、指揮者を大写しでステージから見えるようにし、指揮の伝達を補完しているものと思います。これも初めて知る体験でした。

上演は全体を通じてかなりよい。シチリアを舞台にした物語です。第1幕も第2幕も同じセットを使っているだけなのに、不思議にシチリアの空気感・雰囲気が伝わってくるかのようです。ユニークなのは舞台がガラス張りの建物内部という設定になっていること。室内でありながら、外景の海や空・雲・月などが情緒性豊かに描き出されていきます。照明のコントロールがよく効いていました。「シチリア感」の醸成にはこのセットの工夫の効果が絶大でした。

台詞はフランス語のせいで、主だった配役はフランス人です。それぞれの曲はどれも美しく、さすがにベルリオーズの作品ならでは、というところでしょうか。ベアトリスのベネディクトに対する思いを歌う歌は、『魔弾の射手』の「アガーテの祈り」を彷彿とさせます。これだけの美しさにもかかわらず上演機会が少ないのは、ドラマ展開の単調さ故でしょうか。上演機会に恵まれない稀少な演目を、しかも松本で観ることができた幸運を感じます。
 

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おらほねっと/ミッチーのブログから転載
OMF2015 オペラ公演『ベアトリスとベネディクト』 2015年08月26日(水)
https://sns.orahonet.jp/blog/blog.php?key=15302

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