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アーノンクール氏追悼

カテゴリ: 雑記 地域: どこか
(登録日: 2016/03/20 更新日: 2024/04/02)


指揮者のニコラウス・アーノンクール氏が2016/03/05に亡くなりました。ご冥福をお祈りします。

アーノンクール(1929〜2016)が指揮した生演奏には一回接したことがあります。2006/11/18のこと。今からもう10年近くも前のことになります。添付画像はその時の記録です。

アーノンクールが率いるウィーン・コンツェントゥス・ムジクスによるヘンデルの『メサイア』がその日のプログラム。京都コンサートホールで聴きました。なぜ京都で聴いたか。聴こうと思ったときは東京のコンサートが既に売り切れており、京都でのコンサートの席をかろうじて買うことができた、という事情によります。そのおかげで、紅葉の京都を楽しむ機会に恵まれ、私にとっても思い出深いコンサートとなりました。

アーノンクールを意識して聴いたのはヴィヴァルディの『四季』、NHKで放送されたモンテヴェルディのオペラ『オルフェオ』です。あれは何年のことだったのでしょうか。アーノンクールのオペラはその後、NHKで『ポッペアの戴冠』も聴きました。『オルフェオ』は音楽自体もドラマ自体も虚飾がないバロックの初期の作品で、今日的な感覚からは静謐でスローな持続に耐えながら聴くという一面があることは否めません。しかしながら、アーノンクールの指揮には極めてメリハリがあり、ドラマの悲しみの情感がよく伝わってきました。ついつい引き込まれて聴き入ってしまいました。

アーノンクールの指揮はその後、何枚もCDを買って聴くこととなりました。古楽器で古いスタイルのような演奏を再現する特色もさることながら、聴く度に引き込まれていくのは音楽のメリハリのよさ、遅い速いのゆさぶり、ことさらに強調されるポリフォニックな楽曲の構造的質感、などがあります。どうも音階が平均律のものと違う。たまにある楽器がとんでもない外れたような音階の音を出すことがあります。バッハなどは特にいい。

アーノンクールの数ある指揮の中でその解釈がユニークさが目立つのがヴィヴァルディ『四季』の『冬』第2楽章ラルゴです。ものすごく速いテンポ。走り抜けるようなラルゴでした。イムジチの演奏で2分20秒かかる演奏がアーノンクールは1分10秒です。いかに速さが「もの凄いか」がおわかりいただけるでしょう。モーツァルトの交響曲第39番の第3楽章メヌエットもユニークさが際立つ演奏の一つです。聞き慣れた演奏と明らかに違う速いテンポの伴奏に乗せて、快活な演奏で押しまくっています。よくこのようなクセのあるリズムをオーケストラに指示して引き出せるものだと感心します。

2006年の京都での生演奏は、私にとっても生涯忘れられない演奏の一つとして記憶されました。非常によく引き締まった、統制のとれた演奏で、曲の構造的美観が心地よい刺激として伝わってくるものでした。おそらく、生でこれ以上の質の演奏は望めないものであろうという満足を感じるものでした。これだけの高い水準の演奏を日本の古都・京都で聴くという体験も得がたいものでした。

アーノンクールはかなり数多くのオペラを指揮し、レコーディングもしています。手元にあるモーツァルトのオペラの序曲集はこれまで名前も聴いたことのないオペラが約半分。ネトレプコが主演したモーツァルトのオペラ『フィガロの結婚』も実に個性的なものでした。この演奏はFMの他、テレビでも放送されました。テンポが遅く、逐一、曲の出始めがつんのめるような「間合い」に誰もが真似もできないアーノンクール節を感じました。楽しいオペラなのに、体内が受け付ける心地よいテンポとリズムからはずれまくり、聴き終わったあとでどっと疲れました。

非凡でクリエイティブなセンスが横溢した指揮者といっても過言ではありません。惜しい方を亡くしました。最後の巨匠と思っていた音楽家がまた一人いなくなった、という寂しさが拭えません。
 
おらほねっと/ミッチーのブログから転載
アーノンクール氏追悼 2016年03月20日(日)
https://sns.orahonet.jp/blog/blog.php?key=15625

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