たこあしニュース
日本弁護士連合会のシンポジウムで事例報告
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(月別インデックス: 2002/10/11 更新日: 2004/01/29)
2002/10/10 蕪栗沼のワイズユースについて報告
日本弁護士連合会が主催する第45回人権擁護大会が10月10日,福島県郡山市の郡山市民センターで開催されました。その第3分科会『うつくしまから考える豊かな水辺環境 −湿地保全・再生推進法に向けて−』に参加しましたので,感想などを書きます(報告:香川)。
私は,国内各地での湿地の現状報告の一つとして,蕪栗沼でのワイズユース(賢明な利用)の取り組みを紹介してきました。10分という限られた時間でポイントを絞って話したので,うまく話すことができたか不安ですが。
湿地保全の視点では,依然として開発サイドとの対立構図が深く,事業主体と地域住民やNGO・NPOとの協働による湿地保全がうまくいっている事例は,名古屋の藤前干潟や霞ヶ浦でのアサザプロジェクトなど,まだかなり限られているようです。
特に残念な報告が2つありました。
このシンポジウムの2日前に,沖縄県の泡瀬干潟,ここは豊かなサンゴ礁とアマモ(海草)場が特徴的な湿地ですが,埋立工事が開始されてしまったということでした。環境アセスメントでもさまざまな問題点が指摘されていたにもかかわらず,半ば強行的に工事が実行されてしまうことになりました。バブル期のリゾート事業計画が,この不況のさなかに実行される【愚】。実に残念です。
また,事業主体と市民との協働の事例として高く評価されている霞ヶ浦のアサザプロジェクトでも,冬の間は霞ヶ浦の水位を上げないという市民との協定を事業主体が一方的に破棄して,再び水位変動を始めるとの通達が,やはり2日前に市民に事前の相談もなくなされたそうです。これは,これまで築いてきた信頼関係を崩壊させる裏切り行為だと,アサザ基金の飯島博さんも憤慨されていました。大きな水位変動は,アサザプロジェクトのシンボル,『アサザ』(水草の一種で絶滅が危惧される植物)の生育を大きく阻害し,せっかく流域の小学生たちが育て植えてきたアサザが,みんな枯れてしまう可能性すらあります。
現地報告の後,パネルディスカッションがあり,今後の我が国における湿地保全・再生に向けた取り組みのあり方について議論が行われました。要点は次の通り;
▼ラムサール条約で国別に策定が必要とされている『国家湿地政策』を,早急に策定する必要がある。
アジアでは,タイ,マレーシア,韓国などが既に国家湿地政策を策定しており,既に日本が大きく立
ち遅れている(これに対し,環境省の方は『新・生物多様性国家戦略』に湿地保全のあり方を記述し
てあり,それが国家湿地政策としても位置づけられると話していました)。
▼そもそも,ラムサール条約締約国会議での決議や勧告の一部しか和訳されていないことは大きな問題
である。国家湿地政策などは,ラムサール条約の指針(ガイドライン)や決議を十分踏まえて策定さ
れるべきである。
▼公有水面埋立法やリゾート法などの開発法律が現状のままで,自然再生・湿地再生のための法律を新
たに策定しても,新たな開発の免罪符になってしまう可能性がある。
▼自然再生推進法では,NPO等の住民参画による事業の実施がうたわれているが,NPO自体の公共
性,客観性を担保できる仕組みが必要である。最悪の場合,開発推進や自然保護原則から外れた精神
の住民やNPOが自然再生事業に参画した場合の,環境への悪影響は計り知れない。
▼環境省,国土交通省,農林水産省のパネラーも来られていましたが,自然再生の取り組みはできると
ころからはじめる,自然再生事業の実施のうえで大きな課題となっている,縦割り行政を横断的につ
なげる役割は,やはりNPOやNGOしかないだろうなど,各パネラーの立場あっての慎重な発言が
出ただけでした(ちょっと残念)。
さすがに,日弁連のシンポジウムということもあって,パネルディスカッションが進むにつれ内容が難しくなっていきましたが,湿地保全・再生について日弁連としてある程度の意見の集約が図られたことは意義深かったように思いました。何といっても,配布資料がすばらしい。基調報告書と資料編が,各々約350ページにもなる資料で,この2冊で最近の湿地を取り巻く状況については大体わかってしまうという内容充実の冊子です。まだだいぶ余部があるようですので,資料代2,000円ですが入手されることを強くお勧めします!
なお,このシンポジウムでは地元郡山市内の高校生が450名弱も参加されました。途中だいぶ飽きてしまった生徒も多かったようですが,湿地について理解を深める機会に恵まれたことがよかったと思います。福島県は環境学習に積極的な県なのだそうです。
また,郡山市内のコーラスグループによる水辺にまつわる合唱を企画されたこともユニークでした。
総参加者数は,高校生を含め850名にもなったそうです。湿地保全のシンポジウムとしては空前の規模ですね。
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