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| 佐山恵悟 「トイレが詰まった時に使う“ガッポン”の名前が知りたい」 |
* 駅のホームで唇を重ねる男女を見ての会話 「朝からごくろーな事で」 「まったく、見苦しい」 「あー、見苦しい、ね。お前は今、何を指して見苦しいって言った? 人前でキスぶちかます事が、か? それとも、あそこの二人の外見を見てか?」 「外見?」 「そうだ、外見だ。残念ながらこの世の中は、イケメンはベンチでキスしても良いが、そうでなきゃ『モラルがなんたら』みたいなことを言われる様に出来ている。で、だ。お前はどういった意味で『見苦しい』って言ったの?」 「そんな事も分からんのか?」 「いや、お前が人の面うんぬんで、モノを言うとは思えねーけどな」 * 電車内、走り回る子供を見ての会話 「俺たちが言えた義理ではないが、最近の子供は常識が無いな」 「まったくだ。俺とか奴に足、二回蹴られたし」 「俺たちは子供の頃、『常識が無い』と言われた世代だが、それでも周囲の大人が、俺たちが過ちを犯せば咎めてくれた。まだ、正しい道へと戻そうとしてくれた」 「ウザかったけどな」 「だが、今の時代はなんだ。子供に声をかけただけで犯罪者扱いだ。注意でもしてみろ。侮辱罪で訴えられかねんぞ」 「『子供の自主性が伸びない』だとか『子供が傷つく』とか言ってな。自分の汚点を見詰める事も知らなきゃ、傷つく事の苦しみも知らない。まったくとんだ温室育ちだ」 「親はそれで嬉しいのかもしれないが、子供は哀れだ」 「どんな人間になるんだか……」 「俺たちのように、かもな」 「それ、笑えねーんだけど」 * 保健室での会話 「いつだったかよー、手首切ってる奴は、それで仕方ないみたいな話、したけどよー」 「ん」 「なんつーか、それを見せびらかしたり、ひけらかしたりしちゃ駄目なんだなー、とか」 「……」 「いや、苦しくて、そうするしか道が無いならそれでいいんだ。ただ、その傷を見せびらかすと……なんつーか、自分に酔ってるよーにしか見えなかったり、哀れみを誘ってるよーに見えてウザかったりするんだ」 「それは、うっかり転んで植え込みに突っ込んで、手首が切れて、そこに包帯を巻いたらリスカのように見える事に対する、自己弁護か?」 「説明くさいセリフをありがとよ」 * 学食、力尽きてテーブルに突っ伏しながらの会話 「……おい」 「……あ?」 「ある程度は、場の空気を読めないと駄目だ」 「……だな」 「例えば、これは俺たちにも言えるが、相手にとってまるで興味の無い話を、延々と続けてしまったりするからだ」 「……だな」 「これによって、相手に与える印象は最悪だ。こちらは自分の好きなことを話しているだけなのに。おまけに、好きな話だからこそ、なかなか止められない」 「……なあ、次からはこの席の近くで飯を食うの、止め?」 「……ここが、あの先輩がよく座る席だと知っていれば、近寄りもしなかったさ……」 「……お前、どれくらい話に付いてけた?」 「……まるで。あいにく、知らないゲームとアニメと漫画の話ばかりでな」 「知ってる事なら良かったけどな……」 「……うどん、伸びたな」 「……A定食の味噌汁、冷めただろ」 * 性犯罪のニュースを見ての会話 「またかよ」 「まただな」 「でもよ、別にこの手の性癖を持っていることは別に悪くは無いと思うんだ。子供が好きだろうが、電車でお触りするのが好きだろうが、別に良いんだよ。 ただ、それを実行しちゃ駄目なんだよ。ビデオだとかエロ本の中だけで満足しなきゃいけないんだよ。 それを実際にやることは、誰かを徹底的に傷つける事になるからな」 「……普段から『ロリ○ンは死ね』等と言っている男の言葉には聞こえなかったがな」 「……頭の隅じゃ分かっていても、口から出る言葉は中々抑えられないと言うか……」 * いじめのニュースを見ての会話 「またか」 「まただ」 「他人を恨んだり、疎ましく思ったりするのは人間だから仕方が無い。ただ、先のニュースじゃないが、それで他人を傷つけていい理由にはならん。 例え、誰かが集団の輪を乱そうともだ。排除するのではなく、何らかの形で受け入れなければならないはずだ」 「でもな、イジメをやってる本人ってのは案外、正義の味方気取りでやってたりするもんだぜ」 「正義の……?」 「ウザイ奴だとか、うるさい奴だとか。キモイなって思った奴だとか、他人の悪口言う奴だとか。そういう奴に、まあ、平べったく言うなら『お仕置き』食らわしているような間隔さ。悪い奴は、ぶっ飛ばす。正義のヒーロー、正しい行いじゃねーか」 「受け入れられないからと言って、排除して良いなどと言う事は、無いのだがな」 「でもな、俺たちもそれと同じ事をしているかも知れねー。いや、絶対してるんだ。『これで正しい』と思ってる行動が、誰かを傷つけたりする事は。気付いていないだけでさ」 * 排水路の脇、はしゃぐ子供の集団を見ての会話 「子供の時さ、あいつらみたいに、川とか水が流れてるとこに、無駄に葉っぱとか流して遊んだよな」 「いや、そうか?」 「……ま、まあいいや。でもよ、今時のガキも、俺がガキの時と同じ事やってるってのは、なんか嬉しいな」 「……あれが、お前が子供の時分にやったことか?」 「え? ……あ」 排水路の脇に群がる子供達。 内、一人が抱き上げていたのは、足の短い栗色の子犬。 その子犬が小さく泣き声を上げた瞬間、ポーン、と勢いよく子どもの小さな手から、高くたかく投げ上げられた。 中空でくるりくるりと子犬は廻って、びちり、と小さく水気のある音を立て、狭い川の様な排水路の中に落ちた。 早い水の流れに、子犬が流されるのを見届けると子供達は、きゃあきゃあと嗤いながらどこかへと駆けていってしまった。 二人が排水路に駆け寄ってみたが、そこに見えるのはコケの生えたコンクリートの溝と、その上を流れる濁った水だけ。水は脇の小さな穴の中に飲み込まれ、その奥は暗くて見えなかった。 二人が暫く、そこを眺めていると、その上流から、数輪の白い花が流れてきた。 何の拍子に落ちたのだろうか。薄く、速い水の流れに乗って花は、二人の視界を素早くよぎると、暗い穴の中に、水と一緒に流れて行った。 それを見送ると、二人は足早にその場を立ち去り始める。 その二人の後ろで、詰まった排水路から水が溢れ、道を次第に濡らしていく。 一旦、穴の中に流れた白い花は、溢れる水と共に道路に押し流され、渇いたアスファルトの上まで運ばれ、暖かな日の光に照らされ、やがて、 枯れた あとがき ―自己満足に終らない事物があるのか― どうも、ここまで読んでくれた人、ありがとうございます。 今年度最後のMUSEなのに、全然気合の入っていない私の作品、いかがだったでしょうか。 つまらない? 結構です。だって面白くしようとなんて思ってないもん。 それに、面白くしようとしたって、面白くなりません。 ええ、ええ、分かってますとも。分かっていますとも。 でも、書くことはやめません。 だって、楽しいから。 読む人がつまらなくても、書く本人は楽しい。 自己満足だけど、それも出来ない人間に、ものを書く事は出来ませんよ。 じゃあ、そんなに書く事が好きなら、もっと頻繁に書け、って極々一部の先輩から言われそうですが、まあ、そこらへんは聞こえません。 おわあ、おわあ、聞こえなーい。 |
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