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| 火群楚真 「ネェリア刑務所の日常」 |
| 1 もう何度目の月を見ているのだろうか。ボクがこのネェリア刑務所に服役して二年の歳月が過ぎた。この刑務所にはしょうもない理由で監獄送りになったしょうもないやつらが何人か服役している。 「お〜い、ノットォ。タバコねぇ〜かァ?」 こいつはスモーキー。ボクが入った二時間後に同じ牢屋に入ってきた獄中のでのボクの友達。ちなみに「ノット」って言うのはボクのことだ。 「スモーキー」って名前はこいつの本当の名前じゃない。もちろんボクの「ノット」ってのも本当の名前じゃない。大概の刑務所では受刑者のことを番号で呼ぶ。1112番とか。でもこのネェリア刑務所ではなぜだか知らないけど番号で呼ばない。しかも本名では決して呼ばせない。なぜだか知らないけど。 「よぉ〜、ノットォ。タバコねぇ〜んかァ?」 「あるよ。・・・ほら、6oでいいかな?」 「6oかァ。・・・まァ、ねぇよりマシかァ。」 「ノット」も「スモーキー」もボクらが勝手に呼び合ってるあだ名だ。本名を呼ぶと、なぜかマジックでオデコに何か書かれる。前に書かれたときは、確か漢字で「穴」って書かれた。しかも油性で。落とすのに二日かかった。 名前の由来は服役することになった理由からだ。スモーキーは列車の禁煙席でタバコを吸って捕まったんだそうだ。そんなしょうもない理由で監獄行きなんて聞いたことがないけど、ここではそれもありなんだと最近気づいた。僕はと言うと、実は監獄行きになった理由がさっぱり分からない。強いて挙げとしたら「何もしなかったから」じゃないだろうか。何にせよ、監獄行きになった理由が「ない」から「ノット」になった。 「う〜。オイラ、腹減ったダよ。なァ、ノットォ。何かないダか?」 「ボクにたかるなよ。在ってもイーターは全部食っちまうだろ?」 「もちろんダよ。食べることがオイラの生きがいなんダよォ。・・・わかったダ。ちょっくら探してくるダ。」 イーターはボクらが入って5日後に入ってきた丸いヤツだ。いいヤツなんだけど、食い物のことになると悪魔に豹変するタチの悪い性格を持ってる。前にポテトチップの最後の一枚を食べようとしたら、左ストレートと右アッパーが飛んできた。しかもボクの指に付いた塩まで舐めまくって、ことが済んだらさっさと寝ちまいやがった。ボクはそのとき「こいつの目の前では絶対、ものは食べない」と心に硬く硬く誓ったんだ。 「食堂にパンとピーナッツバターがあったダよォ♪」 「おッ!いいなァ。オレにも一口くれよォ〜。」 「オイラのピーバタサンドには指一本触れさせねェダ!ガルル!」 また始まっちゃたか。飽きもせずによくやるよ。さて、イーターがピーナッツバターを持ってきた様に、この刑務所の牢屋には鍵がかかっていない。っと言うか鍵が付いていない。監視官のお偉いさんがめんどくさがったのかは知らないけど、始めから付いてないっぽい。しかも自販機まで置いてある始末。ちなみにお金は入れなくていいみたいだ。こんなに自由だけどここは紛れも無く刑務所でボクらは受刑者なんだ。ソレが証拠に普通の刑務所同様一日の業務は必ずあるし、逃げられないように両手両足には手錠、足錠がしっかり着けられている。ただおかしいのは普通、横シマ模様の受刑服がなぜか縦シマで色はオレンジだし、灰色もしく白はのはずの壁の色がパステルカラーでしかもピンクっていうことだ。これじゃあ気が萎えて自分が受刑者だって言うことを忘れてもしょうがないと思うけど・・・。 「おお、神よ!なぜこの世に愛をお創りたもうたのだろうか。」 ウワァ。嫌なのが起きたよ。この愛をウンタラカンタラ言ってるヤツは「ラヴァー」って言う。最近入ってきたヤツなんだけど、何故か職業は宣教師らしい。毎日事あるごとに神に祈りを捧げてる。ソレは別にいいんだけど、口を開くと「愛」が飛び出るから困りモノだ。本人は「愛の伝道師」って言ってるけど・・・。つうかイタイんだよなー。もちろん、罪状は「ウザいから」だそうだ。・・・激しく納得できるからある意味ツライ。 「ウゥ・・・、腹減ったダァ。ちょっくら食堂まで行って来るダよ。」 「お前、さっき食ったばかりじゃないか!」 「ちっちっちっ。あんなんでオイラの大宇宙・超合金胃袋が満たされると思ったら大間違いダよ。」 「いや、知らないし・・・って言うか胃袋に名前付けんなよ・・・恥ずかしい。」 「それほどでもねェだダ。ほしたらちくっと行って来るダ〜♪」 まったく何なんだか・・・。しっかし、この刑務所の食堂によくあんなに大量の食い物が置いてあるものだ。イーターの一回に食べる量の総重量、測ったら相当なケタ出るはずなのに・・・。 「なァ。ノットォ・・・。暇すぎねェ?何かこうハートをガッチリわし掴みして離さな過ぎてウゥ〜ン!ってなるようなおもしれくてスリリングなイベント的愚行無いかァ~?」 「分かりずらいよ!」 でも確かにこのネェリア刑務所はその辺にある普通の刑務所よりも平和過ぎって言うかノホホンとしすぎている。この壁一面のパステルピンクが、争いごとを始めとする愚行の一切を無効化する・・・かどうかは定かじゃないけど、このネェリア刑務所が出来てから今まで一回もそのような騒ぎが起きてないらしい。むしろ、この刑務所から出所した元・受刑者たちは全員、善人になって出てくる。というか精神的に幼くなって出て行くみたいだ。 「ただいま帰ったダァ。今回はイーター特製、愛と罪の嵐タフーンサンド・六段積みダよ。」 「ウヘェ〜。胃にもたれそうなサンドウィッチだなァ。しかも、具ゥ多ッ!」 入り口に入れないほどに積まれたサンドウィッチは緑ッ気がまったく無い様に見えた。実際問題、野菜がまったく入ってない。ロブスターがゴト入っていて食べたら痛そうだ。ッていうか、絶対口切ると思う。 「ああ、主の愛によってイーターは今日もロブスターを6尾も頂ける・・・。スバラシ~~~!ハラショ〜!」 「・・・殻、食わすダよ?」 飯の時くらいにしか怒らないイーターがそれ以外で怒るなんて・・・。ラヴァー、恐るべし。 2 そんなこんなでナアナアで囚人生活をある意味エンジョイしている僕ら。そんなボクらに特大の珍事が舞い降りた。ある日、イーターのご飯に便乗しようとボクとスモーキーはイーターの案内で付いていくことにした。 「なァ、、どこまで行くン?そっちは塀だぜ?」 「もうすぐ外ダァよ。ほンれ、そこのドアの向こうダァ。」 イーターが指し示したところには草木に隠れて見えにくいが確かにドアがあった。イーターはいつも通りの感じでドアを開けると・・・・普通に原っぱでした。 「な、なァ。ノット君?ここはもしかしてまさか、刑務所外・・・じゃないかい?」 「もしかしても何も、完全完璧に外だよ、これは。」 そう。ボクらは刑務所の外に出ていた。なぜこれほど簡単に外に出れたのか。なぜ社会とのかかわりを遮断する刑務所の壁にドアが付いていて、鍵がかかってなかったのか。そしてなぜ・・・スモーキーの屁は死ぬほど臭いのか・・・っていうか、目がイテェ!ニゲェ! 「おっと。・・・すまねェな。」 「屁ェしたなら早めに言ってよ!器官に入ってイテェよ!空かしやがって!」 「ほれ!何やってるダ!行くダぞ?」 まったく、スモーキーの空かしはヘビー級だよ。イーターはさっさと行っちまうし。とりあえず、食料調達してから考えることにするか。 監獄へ帰ってきたボクたちは、スモーキーの言ってた「ハートをガッチリわし掴みして離さな過ぎてウゥ〜ン!ってなるようなおもしれくてスリリングなイベント的愚行」に着手することにした。イーターは嫌がってたけど、最終的には「イベント」という言葉に惹かれたんだろう・・・渋々承諾した。 まずはこの手枷、足枷を何とかしないといけない。鎖の音で絶対バレる。枷は鉄かと思いきや、強化ゴムだった。しかも伸びる。ここの刑務所はやる気あるんだか疑いたくなるよ。 枷をチャッチャと外し、ボクらは監獄を後にした。バレない様にイーター、ボク、スモーキーの順番で例のドアで落ち合うことにした。 スモーキーが来たのを見て、ボクはホッとしてスモーキーに話しかけたんだ。 「スモーキー。誰かに見られた?」 「いや、ダイジョーブだと思うぜ?だいたい、見られてもタバコ取りに行くと思ってるだろ〜さ。」 「オイラも似たようなもんだァよ」 「私たちはの行いは全て主の愛に見られておりますけれど、今回は致し方ないですよね?」 ボクらは聞き覚えのある、そして今回のイベントに登場するハズの無いヤツの声の方ボクら三人はをゆっくりと振り返った。 「何でラヴァーがいるんだよ!」 「ここには神様も愛もねェから帰れや!」 「ドーナッツあげるから邪魔するんじゃないだァよ!」 その「突然変異」は気色悪い笑顔をボクらに振り撒きながら法衣をフル装備して立っていた。 「ねェ、ラヴァー。俺たちが何しに行くか分かってる?」 「オ〜ウ!ミサに行くんですよね?私も主の愛の声を聞きたく思います。」 とっても勘違い野郎だ。でもまあ、期待を裏切らない模範解答で少し安心したよ。・・・かなりウザイけど。 「ほっといて行こうぜ?」 「ダな。」 スモーキーたちが同調したのでボクらはラヴァーをほっといてドアを開けて外へ出ると・・・・。 「ア〜ン!アナタ達どこ行くのよォ〜。」 激コユなオカマと妙に足のキレイなバニーガールの格好をしたハゲの中年親父たちを引き連れて立っていた。 その異様な存在感にあのラヴァーですらフリーズしてしまった始末だ。 「あ・・・あの、どちらさま、ですか?」 「アタシ?アタシ、ここの刑務官長。」 「「イーーーーーー!」」 それに同調してお付きの中年親父が奇声を発する。怖すぎです・・・、ママン! ボクらの服役してる刑務所の主がこんなオカマだったなんて世も末だ。 結局ボクらは監獄の中に戻され、額に油性マジックで淫語を書かれ一ヶ月過ごす羽目になった。・・・しかし、まさかあんな人が刑務官長で妙に足のキレイなバニーガールの格好をしたハゲの中年親父たちが刑務官だとは・・・。この刑務所、もっと何か秘密がありそうな予感がするなァ。 完 アトガキ 〜キセルとボク〜 ど〜も。火群 楚真です。今回、一座の作品に取り掛かるのが遅かったせいか、仕上がるのが製本の数日前という恐ろしい結果になってしまいました。 さてさて。知ってる人はご存知かと思いますが、私は自他共に認める極度のヘビースモーカーで、作品製作の際は特にバカスカ吸ってしまいます。今回、設定の時点で既に軽く二箱を過ぎてしまい、更に小説を仕上げるまでに五、六箱を由に超えてしまうほどでした。 まぁそんな、ヨタ話はおいといて。苦難の末、やっと出来た『ネェリア刑務所の日常』ジックリ!ガッツリ!!読みふけってください。以上、火群 楚真でした!! *『ネェリア刑務所の日常』と銘打っときながら、日常的なことがほとんど無いような気がしたということに印刷してる最中、気づきました・・・。しゃあない!しゃあない! |
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